あたたかな温度

 


私……何か隆彦が傷付くようなこと、言ったっけ?

言った覚えは、ない。

でも、無意識に言ったのかも……

どうしよう。

一度頭に浮かんだ「どうしよう」は瞬く間に増殖していく。

ついには頭の中を埋め尽くし、私は不安で塗りつぶされた。


どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。

頭の中はどうしようのオンパレード。

……駄目だ、キリない。

本人に言われてもいないのにうだうだ考えるのが馬鹿らしくなったあたしは、隆彦を呼ぶべく顔を上げた。



だがそこに隆彦の姿はなく、辺り一面、異様なほどの静けさを漂わせていた。

「帰ろ……」

取り残されたあたしは、一人虚しくとぼとぼと家に向かった。