あたたかな温度

 

「じゃあ、なんであんな顔してたのよ?」

もう、せめてもの足掻きだ。


「あんな顔?」

「そう。なんか、悲しそうな顔」

「え、あれ、顔にでてた?」

うわっ。まじかよ! 俺恥ずかしー!

隆彦はそう言ってジタバタと暴れた。

ようやく落ち着いた頃には、いつもの彼に戻っていた。

そして言った。

「昨日、麻子からほんとに好き? って訊かれたとき、正直な話、別れ話されんじゃねぇかなって思ったんだよ。でさ。なんでだって考えたとき、心あたり多すぎて、ちょっと……な」

隆彦は照れたように笑う。

「そういうわけだから、麻子の思ってるような深い意味はねぇよ」