翌朝、亜美を起こすが、なかなか起きてくれない

 夕べ父親を心配して寝付けなかったせいだと思うが

 起きてちゃんと学校に行ってもらわないと。

 預かった以上責任ってものがある。

 こんな場合、学校の先生には、私からも伝えなきゃいけないのかな。

 そんな事を考えながら亜美を起こす

「亜美ちゃん、おはよう。起きて。朝よ。」

「…ん…お姉ちゃんおはよう…」

亜美はとても眠たそう…

朝はトーストと卵焼き、サラダの朝ごはんを済ませ急いで部屋をでた。

亜美の通学路を途中まで一緒に歩く。

「お姉ちゃん、行って来ます。バイバイ」

亜美は友達の姿を見つけると行ってしまった。

「行ってらっしゃい」

亜美に手を振って見送った直後、不意に背後から声をかけられた。

「あの…斎藤さんですか?」

「…いいえ。違いますけど。」

「すみません、今、亜美と一緒だったので

斎藤さんのご家族かと…あ、私、亜美の担任の野澤と言います。」

「…あ、私は斎藤さんの隣人で佐伯と申します。

亜美ちゃんのお父様が急病で入院されたので夕べは急遽、亜美ちゃんの

お世話をさせて頂く事になって…あ、夕べ亜美ちゃんあまり寝ていないので…」

「…あれ?もしかして…佐伯さん?」

「あ、あなた…野澤さん?」

中学の同級生だった。

「…あの・・・斉藤さんから電話ありましたか?」

そうと解ると急に会話がぎこちない口調になった。

あ!ヒトの事ばっか気にしてたけど

ヤバイ遅刻しちゃう!

「済みません、会社に遅れちゃうんで・・・後で斉藤さんから電話はいると思います。」

急いでバス停に向かった。学校からだと駅に向かうより

バス停が近い

昨日も亜美を病院に連れて行くために午前中に時間休とったんだから

今日 遅刻なんかしたら大目玉だ

何とか乗り込んだバスのに中で色んな事を思い出していた。

・・・に、してもあの野澤くんが先生になったんだ。

加奈子は苦笑した。野澤は学生時代、有名だった。

家出したり、深夜徘徊や喧嘩で補導されたり、問題児だったからだ。

加奈子のお節介な性分はその頃からで 学級役員と言う立場もあって

みんなが怖がる野澤にノートを持っていったり、勝手に世話をやいていた

・・・っていうか、みんな野澤の事怖がっていたが 加奈子は野澤の事

怖いと思ったことは一度もなかった。

そういや、野澤に

「人のことばっかやってないで自分の事優先させろよ」

と、言われたことがあった。