誕生日なんだから

一人っきりだけど、テーブルに花を飾り、ケーキも置いて、

お祝いっぽい食事にしてみた。

一人ってのは、こんな風にすればするほど

寂しくってみじめ・・・なんて今更

飾ったテーブルに後悔しながら

食事をしていると、慌ただしくチャイムがなった。

驚いてドアスコープから覗くと。小さな女の子。

「どなた?」

「パパが倒れちゃったの!どうしょう!助けて」

「あ、あなた確か・・・お隣りの…」

「パパが大変なの!お願い助けて!!」

女の子はパニックになっていた。

子供とは思えない力で加奈子を引っ張り、

隣の部屋に… そこには、男性が倒れている。

「…やだ、どうしょ…斎藤さん、」

挨拶を交わす程度しか知らないけど、

たおれているのは、間違いなく斎藤さんだった。

こわごわ斎藤を揺するが目を開ける気配は無い。

あらい呼吸音が聞こえる。

「熱いわね。」

「パパ死んじゃうの?」

「救急車呼ぶね。」

加奈子は、救急車を呼んだ。救急車が到着すると

成り行き上、女の子と一緒に

斎藤さんの搬送された病院まで行く事になった。

なんて日なんだろう。私の32回目のバースデーは…

一人でのんびり祝うことすら許されていないのだろうか・・・

病院で 身内でも無いのに

斎藤が肺炎を起こして入院することの説明を受け、

斎藤の娘を連れてうちに戻って来たら9時を過ぎていた。

…そういえば、斎藤さんって奥さんらしき姿見たことないな…