加奈子は言葉を飲み込んだ…

「難しいな」

「?」

「佐伯のこと、怒らせようと思って言ったんじゃないんだけど、

怒らせちまった。」

「くす・・・怒ってないよ。お節介だってのは自分でもよーくわかってる。

でもね、私、損なんかしてないよ。亜美ちゃんの事助けてるみたいに

見えるかもしんないけど、・・・亜美ちゃんに癒されてた。助けてもらってるのは

私の方なんだよ」

「確かに、子供の無邪気な顔見てると癒されるよ。でも、ずっと関わってくと大変でもあ

る。子供って天使になったり小悪魔になったりするから。でも子供より大人の方が面倒だ

な。」

直人は茶化すように笑って見せた。

「それでも野澤くんは、たくさんの子供達とかかわってるじゃない。あ、今のは、私とかか

わるのが苦痛ってこと?」

「絡むなよ。んなわけないだろ。子供の親の事だよ。」

「…ゴメン」

「俺、余計な事言ったな。」 






それから 二日後 亜美の父親は、退院して来た。亜美は 凄く嬉しそうにはしゃぎ、父親の手

を掴んでいた。

加奈子はそっとその場を立ち去った。

 亜美が父の元に帰ると同時に野澤との関わりも無くなり

また一人に戻った。