必死で走る。



いた…!!





「…あのっ!!」

「あ…」






彼は一目見ただけで、
あたしの事が分かったようだった。





「この前の子やんな…??」

「はい…この間は、
なんかすみませんでした…」





は…??


あたし、何言ってんだろ…。




無意識のうちに
言葉がすらすらと口から出ていく。





やっぱ、あたしこの人の事…。





「いやいや!!こっちこそ
ぼーっとしててごめんな!!」





また焦った顔で謝りだす彼。




柔らかい声の関西弁が
心地良く耳に入ってくる。




いい人そう…。





「…ぷっ」

「…??」




急に笑ったあたしを
不思議そうに見つめる彼。





こんなにも心が温かくなったのは、
本当に懐かしい感覚だった。





「謝りすぎですよ」

「…ほんまやな」




そう言ってははっと笑った彼の顔には、
さっきの寂し気な面影なんて
どこにも無かった。