出発が遅れたせいで、昼を過ぎてもまだ高速を走っている。
父親が、SAでなにか食べようと提案するが、
2人の娘から 即 却下される。
 娘達には、既に、避暑地にある有名なレストランでの食事計画があり、
それまで我慢するよう。
カーナビを器用に操り、
「ここだよ パパ 計画はちゃんと守らなきゃ」
「地子から約束を守ると言われるとお父さんは嬉しいよ」と皮肉を言った後
「しかし、ランチは食べられないかもな」
「ええ― なんでよ」とさらに大声を出し、
「亜子 なんで」と後ろの亜子を見ると、亜子は携帯を操作している。
「なんで携帯なんかやってるのよ」
という地子の目の前に、携帯画面をむすーと出し
「今 調べてるの」
「さすが 年の功」
「年の功じゃない 地子に無い知恵の功だよ」
 なんとかランチタイムに間に合い、車を降りレストランに向かう一家。
地子 飼い犬のメロンに
「待っててね 粗相しちゃ駄目だよ」
地子も飼い犬の前では立派なお姉さん。
 そしてレストランでも、母親が
「私は、お魚にしようかな」というのを
「お魚なんて、家でも食べられるじゃん。絶対 肉だよ」と何も判っていない。
「おいしいね、メロンにもあげよう」
「メロンはいいの」
「でも、自分達だけじゃ、ウエイトレスさんになにか、器もらおうか」
「はづかしいから、やめてよね」
 思いとどまったのか、静かに食べて居たかと思ったら、
「パパ、キー貸して」と勢いよく立ち上がる。
逆膝カックンされた椅子は3mほど後ろに弾き飛ばされた。
その気迫で難なくキーを奪い取ると、駆け出して行き、
なんとメロンの食器を持って来た。
ウエイトレス達の注目の中、自分の肉と皿に残ったソースを器に移す。
しかし、この作業は、ナイフとフォークで行うには少し難しく、
カチャカチャと盛大な音を立てる。
その間中、亜子に厳しく睨み続けられ、また、大きな借りを作ってしまう。、
 ランチも終わり、店員達にほんわかした気分を残し、いよいよ別荘に向かう。