あの頃から君は

 高津はぺこりと頭を下げ、よし、と立ち上がった。

「俺も帰るから途中まで一緒に行こうぜ。鞄取ってくるから待ってて」

 高津は言うなり、走って行ってしまった。

(なんか慌ただしいやつだなあ)

 高津の後ろ姿が曲がり角に消えて行くのを見届け、小巻はポケットから携帯を取り出した。美羽からの着信はない。

(やっぱり、もう呆れられちゃったかな)

 小巻は自嘲の笑いを浮かべ、ゆっくりと歩き出した。高津に告白されて、美羽は誰に相談するのだろうか。それはきっと、小巻ではないのだろう。