「あの、学校に来ようとは思ってるんですけど、朝になるとお腹が痛くなっちゃうんです」
「無理はしなくて良いのよ。でも、来れそうな時は保健室でも良いからいらっしゃい」

 ピンク色の口紅が弧を描く。小巻の笑顔は少しも変わらない。

「はい、頑張ってみます」
「帰りも送りましょうか?」

 伊藤はどこか満足そうな表情で言った。
 生徒が校舎内にほとんど居なくなる頃、小巻の家に伊藤がやってきた。そして、学校に行きましょうと告げられ、小巻は無理矢理に車に乗せられて連れて来られたのだ。

(先生も大変だな。放っておいてくれていいのに)