「俺、あれから足洗ったんだよね。」

「・・え、そうなの?」

その問いに、伸吾は頷いた。

「更紗のおかげで目え覚めたっつーか。更紗が俺のために頑張って金貯めてくれたこととかさ、無駄にできねえなって思って・・・。」

「伸吾・・・。」

もう、その言葉だけで嬉しいよ。

あたしのしたことは、間違ってなかったんだね。
伸吾にとって、無駄なことではなかったんだね。


「今はこっからはちっと遠いけどさ、普通に高校通って・・、まじいい先輩がいてさ、面倒見て貰ってんだよね。」

「そうなんだあ、よかったね。」

伸吾の話が、自分のことのように嬉しい。


「だけど最近さ・・、その先輩、事故っちまってさ・・。」

「・・え、そうなの?」

伸吾の横顔が、暗くなった。
背中がうなだれているのがわかる。

「俺、その先輩のために何かしてやりてえのに・・、何も出来なくってさ・・・。」

「先輩・・事故、って?今は?」

心配になって、思わず聞いてしまう。

「今入院してる。ICU・・だっけ?なんかそんなトコに入れられててさ。」

「そんなに悪いの・・?」

「ああ、手術しねえと・・危険らしい。」

「そんな・・!」

伸吾に良くしてくれている先輩なのに・・。伸吾がその先輩を慕っていることくらい、顔を見ればわかる。

「先輩、親と仲悪いんだよ。だから、親が金出してくれねえらしくてさ・・。」

「親なのに・・・。」

「だよな、親なのにな・・。だから今、俺とか、俺のダチとか後輩とか、必死で手術代かき集めてて・・。」

「そうなんだ・・。」

伸吾の苦しそうな表情に、胸が痛む。

あたし・・、あたしには、何か出来ることはないの?

「ねえ伸吾・・、あたしに何か出来ることない?」

「・・え?」

一瞬間を置いて、伸吾が驚いた表情でこっちを見た。