別に変なこと企んでたわけじゃないんだからっ。

「だから監視だけは・・!」

「無理だな。」

しかしこの鬼は。悔しいくらいに綺麗な顔をしたこの美少女ならぬ美少年は、こんなにか弱いあたしの懇願をバッサリと切り捨てた。

「お前がどうしても嫌だと言うなら・・」

「言うならっ?」

え、やめてくれるのっ?

「お前の部屋にカメラ・さらには録音機を置いてもいいぞ。さあ、どっちがいい?」

あたしの希望を散々に打ち砕いて、この鬼は恐ろしいくらいに美しく微笑んだ。


な、にが・・どうなったら・・・そうなるのよーーーっ!!!

「変態じゃん!ストーカーじゃん!犯罪じゃん!」

「違う。堂島家の秘密を守るためのやむを得ない行動だ。」

「言い換えれば、犯罪よ!」

「ああもう、うっせえな・・・。」

て。あ、れ?
ここでちょっと堂島さんの様子が・・。目が、据わってる?

え、あれ。
あたしが押してたはずだったんだけど・・違うの?ねえ違うの?


「俺は、やるといったらやる。SPつけられるか、それプラス、カメラと録音機か。どっちがいい?」

リムジンの狭い車中で、あたしは自分の心臓の音を聞いていた。どくん、どくん、と、大きな音で鳴り響いている。

どうすればいい?
どうしたらいい?

どっちも嫌よ。
プライバシーだけは譲れない。

そこで、あたしが苦し紛れに出した答えは。


「な、なんでもしますっ!」

「は?」

堂島さんの均整な顔が少しだけ崩れた。
あたし自身思う。


アナタナニヲイッテルンデスカ???


「な、なんでもしますよっ。信じてもらえるまでっ。パシリでも、なんでもっ。あたしこれでも料理は得意だし掃除も出来るし勉強は・・まあまあ・・ですけど、でもっ、損はないと思うんでっ!」

「あんたさあ、なに言っ」

「だから!プライバシーだけはっ!プライバシーだけは・・・。」

知らず知らず声が震えた。
初めて、権力とか、金持ちとか、得体の知れないものを怖いと思った。