「それって“練習”じゃない…よね?」

「……うん。」

「俺にだけ、くれるんだよね?」

「……そうだよ。」

「アヤは俺のことが好き、ってことだよね?」

「……っ」


さすがに答えられなくて、私は代わりに小さく頷くのが精一杯。

きっと、顔は真っ赤になっているハズだ。


「ちょっ…」


なるべく、顔を見せないようにしてたのに……

握っていた包丁を横からさりげなく奪われて、思わず顔を上げてしまった。

そこには当然……


「チョコは、いいや。」


この上なく嬉しそうに笑うハジメの顔。


「今年はいらない。来年にして?」

「え……?」

「どうせ、今はまだ食べられないし…来年までには克服するから。」


言いながら、まだ大きなチョコのかけらを指でつまみ上げた。


「今年は、これで許して?」

「……っ!」


次の瞬間、

口の中に広がったのは、苦い苦いチョコの味。



だけど、


それはすぐに、甘く甘く溶けていった。