“行く”ってどこに?

“言う”って誰に?

そもそも、“待ち合わせ”って……?

熱のせいなのか、この状況のせいなのか、全く頭が働かない。


「あー、チョコ、どうしても渡したいって言うなら、渡してきてあげてもいいよ?」


そんな私のことを完全に無視して、ひとり勝手に話を進めるハジメ。


「今から作る、って言うなら手伝うし。」


ちらっと時計を確認してから、にこっと笑った。

そしてそのまま、嫌味なくらいに可愛い笑顔のまま言葉を続けた。


「だけど、アヤは行っちゃダメ。」

「は……?」

「チョコはあげてもいいけど、アヤはダメ。それは絶対に許さない。」


笑ってるのに……
甘ったれた口調はいつもと同じなのに……

なぜか有無を言わせない怖さがある。

射ぬかれるような視線を向けられて、反らすこともできない。

ただただ固まる私に、ハジメは……


「俺さー…


別に、チョコはどうでもいいんだけど、アヤは欲しいんだよね。」