「それより、アンタどうやってここに入ったわけ?」
あと1時間弱。
追い返すことは諦めて、さっさと終わらせてしまおうと考えた私。
コートを脱ぎながら、とりあえず疑問をぶつけてみた。
「え?ちゃんと、玄関から入ったよ?」
……ダメだ。全然わかってない。
「そうじゃなくて。なんで無人の、他人の家にアンタが入れるわけ?」
「え?あー…、朝、出かけるときにおばさんに会って…今夜も遅くなるから、アヤのことよろしくね、って…鍵渡されたから。」
にかっと笑うと、ポケットから鍵を取り出して見せてきた。
「お母さん…」
なんて不用心な。
そもそも、コイツに頼むこと自体間違ってる。
“よろしく”されてるのは、私だってば。
「今の世の中、何かと物騒だからねー。アヤはよかったね。俺が隣に住んでて。」
安心でしょ?なんて、ハジメは得意気に笑ったけど……
いやいや、むしろ心配だから。