フラフラした足取りで、なんとかキッチンにたどり着いた私。

扉を開けて中に入った途端、固まってしまった。


「なんで…?」


小さく漏れた私の言葉に、ソファーでくつろいていた背中が振り返った。


「あっ。おはよーっ。もういいの?」


リモコン片手に私に微笑みかけたのは、間違いなく……


「……なんでいるの?」


なんとか絞り出した声は、ひどく掠れていた。


「え?あー…おばさんが入れてくれたから。」

「学校は?」

「今日は休みじゃん。土曜日だもん。」

「じゃあ、部活は?」

「今日は朝だけ。」


私の一方的な質問に、律儀に答えていくハジメ。

その様子は、いつもと何ら変わりはなくて……

やっぱり、あれは夢だったんじゃないか?って、思わずにはいられない。

もうすでに、あの時私は熱があって、幻覚を作り出してしまったんじゃないか、って……


でも……

首筋に残った赤い印が、それが“現実”であることを物語っていた。

しばらく消えなかったし……


「うわっ!アヤ……?」