その声の主は――



「…タツキ…さ…ん」



ああ、もう嬉しい。当たり前のように握ってくれている手の感覚を感じられることが。


声を聴けることが。



「大丈夫か?」



声を出すことが億劫で頷くことしか出来ない。それでもタツキさんは良かったと喜んでくれた。



「……お兄…ちゃ…ん」



お兄ちゃんは生きている?と訊きたかった。タツキさんは上手く言葉を紡ぐことが出来ない私の意思を組み取ってくれる。



「生きている」



強く私の手を握って私の目を見て言ってくれた。



やっぱり。思わず笑ってしまった。良かった。良かった。


タツキさんも不思議そうに笑う。その目には涙が。



「……ね…むい…」



ダメだ。眠い。身体が重い。


「寝て良いよ」



少しタツキさんは心配そうな顔をしたけれど、私はその言葉を聴いて素直に眠りについた。