「八神さん」



何度も名前を呼ぶ。諭すように。お願いだから、話してほしい。



「お兄ちゃんはどこですか?」



会いたい。会いたい。会いたい。お兄ちゃんに会いたい。1週間苦しい思いをしてきた。



辛かった。目の前の現実を受け入れなきゃいけないことが。“殺人”が身近で起きるなんて思わなかった。



たくさんの人に支えてもらって、ここまできた。現実を受け入れるからには真実が知りたかった。



ただの行方不明ですまされたくなかった。指名手配犯とか思われたくなかった。



お兄ちゃんは、そんなことするはずない。叫びたかった。


「お願いだから」



もう懇願になっていたと思う。気づいたら泣いていた。八神さんも泣いていた。



良い人だったのに。どんな人間にも陰がある。分かっていたけど、信じたくなかったけど。




「レイちゃん」