焦る八神さんから私は目をそらさない。



「八神さん、以前ご近所付き合いは面倒だからしてないって言ってましたよね」



客に対しての1対1の付き合いは商売だから何とも思わないと言っていた。



ただ、近所や商店街やお店の付き合いは違うとも言っていた。集まれば、あの客はどーだとかこーだとかの悪口を聴かされる。



反対の意見を出せば、それが自分に向かってくる。いい年した大人の集まりなのに、まるで子供と話しているようだ。


そう愚痴を溢していた。そんな人が噂でお兄ちゃんの名前を知るはずがない。



「八神さん」



八神さんの額に汗が滲んでいる。微かに手が震えている。私とは目を合わせず一点を見つめている。



―――この人は知っている



ここで怯んじゃいけない。