「そうね。ただ別れてほしいってことを言いたかっただけだから。もう良いわ」
「……そう…ですか」
分かっていたのに。あっさりとそれを言葉にされてしまうと、胸が痛い。
タツキさんのお母さんは、相手の心を掴みどん底まで引き落とす力を持っている。
怖くてたまらない。
「簡単でしょ?“別れて”ってその一言を言えば良いの。タツキは私よりも貴女の言うことならきくと思うから」
簡単なわけない。その一言がどれだけ重いかこの人は知らない。
「どうせ子供のお遊びの恋愛でしょ?別にタツキと結婚するわけじゃないんだから。元々真剣に付き合ってないでしょう」
お遊びなわけない。恋愛はそんなに軽いものじゃない。
「……っ失礼します!」
頭を下げて店内を走って外へ出る。
従業員は私の突然の行動に驚いていたけど、タツキさんのお母さんは――笑っていた。嘲笑うかのように。冷たい笑みを浮かべていた。とても怖かった。

