――――連絡がつかなくて、これほど焦ったことはない。





≪ただいま電話に出ることが……≫


電話の向こうから無機質な機械音が聴こえる。留守番電話にはならず、再びかけ直せと機械音が言う。



(電源を切っている…)


マナーモードではなくて直接電源を切って、外部からの連絡を絶っている。何のために?



椅子から立ち上がり、ポケットに携帯電話を入れて財布を持ち階段を駆け降りた。



「出かけてくるから!」



リビングにいる母親に声をかけて、家を出ようとした。



「……」



返事がない。いつもはうるさい母親がどこに行くのかとかしつこく訊いてくるのにそれがない。



決して気になったわけじゃない。ただ、いつもと違うことが気持ち悪くて。リビングを覗いた。