「何してるんですか?会議始まりますよ」



「また会議かよ」



煙草を携帯灰皿で吸い殻入れですり潰し喫煙所を出る。その後ろから苦笑いをしながらついてくる龍。


「俺ら、人手が多すぎるって警護に回されたじゃんか」


「これから人手が必要になるじゃないですか?」


「……なんだよ、それ」


龍は、これから始める捜査会議に意気揚々としているけれど俺はそんな場合じゃない。というか、ずっと警護が良かった。



「乗り気じゃないみたいっすね」



「当たり前だろ」



「まぁ…そうかもしれないですけど」



最初は誰も簡単な家族内殺人だと思っていた。長男が両親を殺害して逃走。すぐに捕まえられると思っていた。



だが、捕まえることが出来ない。なんたって長男の足跡が見えない。



ある程度足取りは見えてくれるはずなのに、それがない。まるで消えたようだ。




会議室に入り椅子に座る。当然のように龍が隣に座る。何故お前はここに座るんだ。



「何ですか?」



笑顔で俺を見てくる。温室育ちの龍。本庁の幹部の息子だという噂を聞いたが本人は家族について語らない。俺とは大違いの奴だ。



今までの俺だったらコイツに近づいていない。というか、そういう良いトコ育ちの坊っちゃんなんか大っ嫌いだ。だけどコイツは愛嬌があって人懐っこくて。



他の奴らとは違う。だから俺はダメなんだ。



捜査会議中、龍は熱心にメモを取るが俺は頬杖をついて捜査資料をペラペラ捲(めく)るだけ。