「……」



ふいに唇が奪われる。少し唇が触れただけなのに、それだけで目の前で妖しく笑うタツキさん。やられた。



「じゃあね」



何事もなかったのように、彼は手を振って帰って行った。



ムカつく。


私はその背中に文句を言う。でも、頬が緩んでいる自分もいるのが分かる。



そんな自分もムカつく。



もう、タツキさんってなんでいっつも。王子様みたいに優しい感じなのに、隠れドSというかなんというか。



ショルダーバックから鍵を取出しそれを鍵穴に入れる。