「会ってない?」



「はあ!?櫻井、俺のメールで会ってたって言ったよな?」



真吾もそれを聞いていなかったみたいだ。真吾の問いに櫻井さんは、ごめんと応えた。


私も。確かにあの日お兄ちゃんは友達と会うって言っていた。ちゃんと覚えている。



じゃあ会った人はこの人じゃない?



「私、“コウタと会う約束”をしていたんです。一緒にご飯食べよって」



お兄ちゃんと会う約束をしていた。



「でも私、急用が出来て…祖母が倒れたって言って。コウタとの約束を断って病院に行きました」



ぽつぽつと紡ぎ出されるあの日の記憶。



コウタの最後の足取りを知っているのは多分私です。



今まではずっと下を向いていたのに、その言葉だけは前を向いて私の瞳を見て言った。