「学校行ってました」



「……そっか」



一瞬、間が空いた。けれど納得したようにして笑顔を見せてくれた。



私が出かけているなんて思わなかったのかな。しかも学校に。タツキさんは訊いても良いこと訊かないからな。一線に踏み込もうとしない性格だから。



「タツキさんは?」



「俺はバイト」



「バイト?」



今は朝の9時半すぎ。バイト先である八神さんの喫茶店に行くなら、今歩いている道を戻るしかないのに。



彼はバイト先がある方向から自転車を漕いできた。



「ああ。昨日のバイトでロッカーに携帯置いたまま帰ったから取りに行ってた。八神さんにも会ったよ。"コウタくん見つかると良いね"とか言ってた」



「そうだったんですか。じゃあ昨日の電話は家電?」



「そう。出ないかなと思ったけど出たから驚いた」



「何となくタツキさんだなーって思ったんです。そしたら当たりました」