目の前には見覚えのある家。ううん、忘れることなんかない。



私の家。17年間過ごした大事な大事な思い出が詰まった私たち家族の家。



その家には、立ち入り禁止のテープが張られていた。その前に立つ警官が1人。



マスコミはいなかった。警官は不思議そうに私を見つめる。



「あの」


「はい?」


「入っても良いですか?」


「は?」


「入っても?」



何を言っているんだコイツという何とも怪訝そうな顔をしている警官。20代くらい。中野さんや龍ヶ崎さんと同じくらいの歳だろう。



彼は、急に何かを思い出したようにアッと口を開いた。やっと気づいたらしい。



警官は待って下さい、と言って肩にある無線機のようなものを掴もうとして――



「ちょっと何!」



掴もうとしたのを私が止める。警官の手を掴み無線機から払いのける。



自分でも何をやっているのか分からなかった。でもここで連絡されたら、絶対に断られるに決まっている。中に入れない。




「お願いします」



警官をじっと見つめる。いや、睨む。