「まさか“あの子”の家?」



随分と他人行儀な言い方にイラついた。名前も出さない。拒絶するような言い方に。



あの子が誰と訊かなくても分かる。気づいていないふりをしようとしたけれど、わざわざ墓穴を掘るようなことをする必要はない。




「違う」



「そう。なら良いけど」



“あの子”の家じゃなかったらどうなんだ?



あの日から母さんはピリピリし始めた。父さんもだけど母さんの方がひどい。



知らない年配の男女に謝罪と礼を言われ、それが殺人者の祖父母かもしれない。



関わりたくない。心の声が聞こえてくるようだった。慈愛に満ちた表情をして“早くお孫さんが見つかると良いですね”なんて言って。



大きな嘘。