親不孝者でした。

唯一、父親を喜ばせたのはやはり一度きりの小説出版。
父は、何度も何度も読んでくれた。
「お前は本ばっかり読んで育ったからな」
友達がいなかったからね。

喪服、黒いスーツ。
ちょうどいい。
このまま就職活動をしに行こうじゃないか。

「ちょっと職安へ」
何も言わずに抜けるのも礼儀知らずかなと思い、一言かけておいた。
伯母さんは、ぽかんとしていたが一向に構わない。
厳しい社会の入口に突入だ。