「田嶋さんですよね?」

背の低い女店員はえくぼを作って微笑んでいる。
素性なんて分かるまいと思っていたのに。
自分の著書の前でうろうろしている状況を見られたのが恥ずかしくて、赤面してしまう。

どうして俺だと分かったのか聞こうとしたが、
「受賞された時の写真、見ました」
と、先に返答されてしまった。

「私、小説とかって読むの本当に遅いんですけど、田嶋さんの本はあっという間に読めました」
眩しい笑顔って、これのことを言うのか。
かと思えば、慌てた様子で、
「いえ、文章が単純という意味ではなくて、そう、面白くて吸い込まれるような…」