借金取りに捕らわれて

「ヒロ?」


「えっ、あっ…の…」


絶望から意識を上げた私は、名前を呼ばれてなんだか嬉しくて、だけど突然のことだったから上手く言葉が出てこなくて、ただ顔をさらに赤らめるしか出来きなかった。



なんだか情けなくて目が潤む。


こんなに私が恋に弱かったなんて知らなかった…



いくつかの恋をしてきたつもりだったのに…


……ホントに“つもり”だったのかもしれない。



「そんなこと言わないで下さい…
本気で好きになりそうですから…」



「くっ…」


秋庭さんは小さく噛み締める様な声を漏らすと、手を繋いだ私を引きずるようにしてドシドシ歩き出した。


「あ、秋庭さん!?」


彼の背を必死に追うけれど、私の声は聞こえていないみたいにずっと彼は私に背を向けていた。