借金取りに捕らわれて

「なんだ、戻ってきてたのか。」


「3日だけね。明日にはパリの空の下よ。」


「売れっ子デザイナーは大変だな。」


「売れっ子って、言い方古いわね。」


「間違ってはないだろ?」


この自信たっぷりな言い方…


「フフフッ、貴方変わってないわね。
こうして二人だけで会うと25年前を思い出すわー」


「あの時も偶然だったな。」


「ええ、ニューヨークの街中で。」


あの時はホテルを飛び出して、どこ行くわけでもなくただ街中を歩いてて…


「お前、泣きながら歩いてたから目立ってたなー」


アッハッハと癪に触る笑い方をするものだから、本気で一発殴ってやりたくなったが…
公共の場故、押し留めることにした。


「もう、忘れてよ!恥ずかしいー」


「あん時は大変だったなー、俺の家に無理矢理上がり込んでー」


「若気の至りよ!」


これ以上あの時のことを言われたくなくて、腕組みをしてそっぽを向いた。


「二人とも若かったな。」


「それはそうよ。でも貴方は昔から変わってないわね。」


横目で見れば、今の獅郎ちゃんに若かった時の姿が重なる。