借金取りに捕らわれて

その手には鉄パイプやバットが握られている。




こんなのドラマとか映画の世界でしか知らなかった…




武寅さんは私を後ろ手に囲うと、じりじりと工場の壁へと移動し取り囲む奴らを警戒しながら扉から離れた。





「随分探したぜ。小柴ちゃ~ん♪」





取り囲む群衆の中央が裂け、髪を赤く染め、口にはピアスをしたひょろ長い男が現れた。

上着から覗く紋様のようなタトゥーは首から頬へと繋がっていて、体格といいどこか不気味な雰囲気を醸し出していた。




「二階堂…」




呻くように、口に出すのも嫌だと言うように言った武寅さんの横顔は、さっき私に微笑んでくれた武寅さんと同一人物とは到底思えない程恐いものだった。