「美結ちゃん、久しぶり!」


人込みを避けるようにして走り、美結ちゃんにぎゅーっと抱きつく。


「美結ちゃん、会いたかったよ~」


「私も、結菜ちゃんに会いたかった」


美結ちゃんと感動の再会を果たしていると、「おい、結菜」と龍守に低い声で名前を呼ばれて、美結ちゃんから引き離された。


「ちょっと龍守!なんで美結ちゃんから引き離すの!」


私が抗議の声を上げると、龍守の怒った顔が私の目に飛び込んでくる。


「まったく。俺の手を離して走っていくな!しかも荷物も放置して」


「あっ、ごめん。荷物置いてきちゃったから、怒ったの?」


「違う。俺は、結菜が俺の手を離したことに怒ってるんだ。パスポートさえあれば、最悪荷物はどうでもいい。そんなことより、お前が迷子になることの方が問題だ」


「だって、美結ちゃんに会えたのが嬉しくて……」


二人でワーワー言い合ってると、美結ちゃんと愛人さんにクスクスと笑われる。


「相変わらず仲がいいのね、二人とも。でも龍守、ちょっと過保護過ぎない?ほんのちょっと走っただけじゃない」


「いやでも、龍守の言う通りだよ。ここは日本じゃないし、気をつけなきゃダメだよ結菜ちゃん」


「はーい」