しかし19時の番組終了までに幼児殺害事件の犯人が死亡、という続報が報じられる事は一切無かった。

そして母親が買い物から帰宅し、夕食を食べ、夜9時のニュースをチェックしてみても一向に反応が無い事を考えると望人の頭は結論を導き出す。

テレビのモニターに対して死の言葉を発しても、対象を殺す事は出来ない。

言い換えれば恐らく、ある一定の距離を以って対峙していなければ死の言葉は効力を発揮しない。

新たなルールの発見に望人は若干戸惑い、新聞の一面に載る横転したトラックと、今朝のおばあさんの柔らかな笑顔を何度も何度も交錯させていた。