私は店を出ると冷たい冬の匂いの漂う賑やかな通りを歩いた。 冷たい風が頬を伝う。 風と一緒に手首から微かにバニラの香りが届く。 (らしくないなぁ…。) バニラの香りはあいつにはぴったりだと思うけど私とは相性が良くなかった。 「寒っ…」 口を手で覆い、白い息を吐く。 それと同時にきつい甘いバニラの香りがする。 「クゥーーン」 下の方で鳴き声が聞こえた。