「あら、いらしてくださったんですね」
千鶴さんが声を掛けてくれた。
「はい」
「こちらは?弟さん?」
千鶴さんはけーたろーを見ながら言った。
「いえ。迷子みたいでこの子のママを一緒に探してるんです」
「心配ですね。でもゆうたやこの子も迷子に好かれるんですね」
「あは。なんか、この香りが迷子を引き寄せるみたいです」
「この香り?」
「はい」
そう言って手首を出した。
千鶴さんは手で扇ぎながら驚いたような顔をした。
「甘い香りですね。バニラですか?」
「はい。ホント甘いですよね」
「私は好きですよ。そういえばお名前きいてなかったですね」
「あっすいません。加月紗江子です」
私は少し頭を下げて言った。
「紗江子さんね。よろしく」
「はい」


