颯真君はまだベンチに座ったまま。
そんな颯真君が呑気に問いかける。
「けど杏ちゃんは、
食べなくてよかったのー?」
こんなに注目浴びてるのに
相変わらず変わらない話し方。
鈍感なのか、慣れてるのか…
やっぱり分からんなー。
「私は結構です。大丈夫です。」
背中を向けたまま答えた。
このまま居たら色んな人の視線で
自分に穴が開く気がしてたまらない。
今のあたしには教室に戻ろう
という気持ちが増すばかり。
あたしは急いで弁当箱を持ち直して
一切椎名颯真に振り返りもせず
屋上を後にしようとする。
するとそんなあたしの後ろから
何時もと違う椎名颯真の声。
それは駅で聞いたまじめな声。
思わず歩くことをやめてしまった。
「俺が居るから大丈夫だよ、藤堂。
強がるのそんなに好き?」
ドキ…。
え?
今あたしドキっとした?

