「無理です。颯真君なんて
馴れ馴れしく…。それに可愛くない
人間が可愛く呼べる訳ないじゃない…。」
これには椎名颯真も
何も言い返せないだろう。
あたしが可愛くないことは
椎名颯真だって百も承知な筈だから。
それに無理だ、親しくもない人を
下の名前を君付けで呼ぶなんて。
だけどそんなあたしをフッと笑うように
椎名颯真は言い返してきた。
「えー、けど僕杏ちゃんの秘密
知ってるんだけどなー、あはははは。」
はっとした。
そうだった。
忘れていた。
椎名颯真はあたしが
ヲタクだってこと知ってることを。
再び忘れかけていた
絶望感が蘇って来る…。

