試合の帰り道、私は

"例の公園"

に寄った。

桜の木の隣にあるベンチに座り、野田と"ここ"で会った事を思い出していた。

「桜、だいぶん散っちゃったね…」

小さく、懐かしい声が聞こえた。

「野田…」

「隣、いい?」

野田はまるで

"自分"

を見るかのように、散りかけた桜の木を見ながら私に問いかけた。

私はベンチを見たが、振り払う桜の花びらはもう無かった。

「久しぶり…」

「学校で毎日会ってるじゃない…」

「いや、そうでなくて、こうやって話すのは…」

"あの時"の再現のように、

"沈黙"

が続く…

私は心の中で、もう"じゃんけん"はしなかった。

「あの…」

二人同時に切り出した。

「何?」

私は聞いたが、野田はうつむいている。

野田の性格からして、自分から言うタイプではない。

「今日、"じゃんけん"は?」

「え?
名前覚えててくれたんだ…」

「あんな変な名前忘れたくても忘れねーよ。」

野田は、

"クスッ"と、笑った。

二人の間の"緊張"がほどけてゆく。