「あの…」

私は右足のスパイクの紐が結び終わり、左足のスパイクの紐を結びながら言った。

「なんだよ!」

寺崎先輩は私のすぐ横に
"ツバ"を吐いた。

私は両足のスパイクの紐を結び終わり、立ち上がった。

「"尊敬"する寺崎先輩にお願いがあるんですけど…」

寺崎先輩は私を小馬鹿にするように笑い、右手の親指と人差し指で
"輪っか"を作り、答えた。

「金か?
金ならいくらでもやるよ!」

「いや、そうではなくて、試合、自信無いんで僕の球見てほしいんですけど…」

「バッターボックスに立てって事か?」

「是非、寺崎先輩にお願いしたくて。」

周りが"ザワ"ついている。

私達の様子に気付いたのだろう。

寺崎先輩は思ったより素直な人だ。

「しょうがねーな。
お前の"へなちょこボール"なんか、場外送りにしてやるよ!
オイ!
誰かキャッチャーやれや!」

私はその言葉を

"消しゴム"

で消すように言った。

「キャッチャーいいです。
一球で終わりますから。」