「す、すみません、驚かすつもりは……」

「あっ、ロルフか」


緊張してたせいか、ロルフが入ってきた事に気付かなかった。

ロルフもビシッとタキシードを着て、いつもよりめかし込んでいる。


「声をかけても気付かれなかったから……すみません。そろそろお時間です、準備はお済みですか?」

「ええ、大丈夫よ」


女言葉も、お姫様スマイルも慣れてきた。お姫様じゃなく、女王様だけどね。

でも、ロルフの事を騙しているという、罪悪感には未だに馴れない。


「行きましょう、マルティーナ様」


僕を信じて満面の笑顔をくれるロルフに、ズキンと心痛みながらも、僕は笑顔を返す。しっかりしなきゃ、今の僕は姉様なのだから。