「……マルティーナ様、もしかして忘れたのですか?」 「えっ……」 さっきまでの笑顔は消え、急に真面目になり僕を見つめてきた。 忘れたわけじゃない、最初から知らないんだ。 「そうね、なんだったかしら?」 忘れてしまったフリをして、ロルフに聞き直した。下手な事は言えない。 「馬ですよ、迷子になってた馬を拾ってきたんです」 姉様……そんなの拾ってきたの? 「そうそう、あの時は大変だったわね」 無難な答えを返した……つもりだった。ロルフは急に顔色を変え、黙り込んだのだ。