大学病院の精神科へ通院することになった美緒。

その時は姉が自動車免許を持っていたので、
姉の車で母親と3人で病院へ向かった。

向かう途中
美緒はずっと流れる景色を窓から見つめていた。
僕らは美緒から出来た人格でも、美緒の気持ちまでは分からないけどきっと不安だったと思う。

…実は、美緒はこの時まだ無自覚だが
後々知ることになる。

この時から僕ら他人格はもう美緒の中に存在していた、と。

最初、人格が表に出たのは小学5年生の時
掃除時間の時だった。
これを書く「僕」という人格は、その時はまだ居ないが
急に美緒の仲の良い同級生に美緒が男口調で接しはじめた。
「お嬢ちゃん」と年下扱いして同級生と揉めたらしい。
それは一回だけじゃなく、男口調の美緒(男性の人格だと思われる)は同級生をビンタした。
そして美緒も同級生にビンタし返され、普段の美緒に戻った。
状況が掴めない美緒と同級生はなんとか仲直りをし
その後、「美緒、もしかして取り憑かれているじゃない?」となり、話はそのまま流れていった。
ビンタした男性の人格はそれ以来出てこなくなったからだ。

…きっと誰も同級生は覚えていないだろう。