店内はジャズが響いていて、
より一層おとなのムードを漂わせていた。
「いらっしゃいませ」
マスターの声は少し驚きが混じっていたが、
表情は1mmたりとも変わらず余裕みたいだ。
「お一人様ですか?」
「はい」
「杏里さん、ご案内を」
「はいマスター」
女の子らしい明るいがあるが、
おしとやかそうな声が響いた。
その声をたどるように目線をずらすと
ポニーテールの女性が俺の方へと歩いてきた。
「今日は少し多くの方がいらしてくれてるので、差し支えなければカウンターの方へお越し下さい」
…そう言われてくるっと見渡すと、
たしかに老若男女問わずにたくさんの方がいて、ほぼ満席に近い状況だ。
しかし、少し広めなこのバーにとって
珍しい事なのかはまだ分からない。
ボーッとしながらも、
俺は杏里さんと呼ばれていた女性の後ろを歩いて、カウンターに座った。

