朝の風はやはり心地よい。 全身で風を受け止めながら 俺は帰り道を辿っていく。 昨夜とは比べられないくらい 三丁目は静まりかえっていた。 …親がいない、帰る場所がない、 そんな環境を青谷は、数年間過ごしてきた。 …傷みがどれほどだなんて 俺にはかる権利はない。 マスターが話してくれた一言一言を ゆっくり脳裏からよみがえらせた。 『小さい頃、ご両親を事故で亡くしたそうで。 親戚に預けられてた、と。 しかしなにかあったのでしょうね… 彼女は親戚の家を出てから、繁華街で働いてるのです』