「どうしようっ…。啓人さんを好きになって…」


燐の瞳から大粒の涙が溢れ出た。

あたしは慌てて燐のもとにハンカチを手渡した。


「分かってるの。無理だってことは…。
でもっ、この気持ちをどうすることも出来ないの…」


小刻みに震えている肩を、そっと抱き寄せた。



「大丈夫。大丈夫だから」

「…ううっ……」

「あたしに考えがあるの」

「えっ…?」


真剣な眼差しのあたそを
ゆっくり見上げて、不思議そうな目で見つめる燐。



「燐と啓人が、一緒にいられるように協力する!」

「ルアッ…!ありがとうっ」


燐の言葉に首を左右に振っていると、
また涙を流し始めた。


「もう~。泣かないの!」

「だっ…てぇぇ~」

「しょうがない子~」


優しく頭を撫でると、
何度もあたしの胸の中でお礼を言っていた。




暫く経って、正門まで行くと
啓人と燐の執事の秀人(シュウト)さんが立っていた。


「お嬢様っ。遅いので心配しておりました」

「ごめんね。ちょっと用事があって…」

「左様でしたか」

「…啓人」

「はい」

「貴方に移動してもらいたいんだけど、いい?」

「……え?」


あたしが言った言葉に
啓人の表情が一瞬曇った。