何も頭に入らぬまま、終了時間になった。



「ねぇ、燐。朝の続きだけど…」

「あ、うん」

「あたしになんて聞こうとしていたの?」

「………」



燐に聞いてみると、中々答えようとしない。

大きな悩みなのかな。



「何かあったの?」

「……このことは、誰にも言わないでくれる?」

「もちろんっ」



子犬のような目をして、あたしに話しかけてくる燐。

あたしはじっと燐の言葉を待っていた。



ゆっくりと深呼吸をして『あのね』と話し始めた。

その言葉に静かに頷く。


誰もいない教室にいる分、燐の声がクリアに聞こえた。


「私、好きになってしまったみたい…」

「……誰を?」


すると、燐は顔を真っ赤にして



「…啓人さん……」

「えっ!!?」


あたしは燐の言葉に目を丸くすることしか出来なかった。


だから啓人に会ってから
燐の様子がおかしかったわけだ。


『あぁ』と納得していると
燐があたしの手をとった。