「ねぇ、あのお方…誰かしら?」
燐が向ける視線に、自分の目線を持っていった。
「えっ!?」
「え?」
「あっ!」
あたしは声を出して驚き、
燐は驚いたあたしに驚き…。
『あっ!』と声を上げたのは、
あたしの執事の啓人(ケイト)だった。
「啓人、どうしてここへ!?」
半分理解出来なかった私は、
お上品さをどこかへ吹っ飛ばせて
啓人に詰め寄った。
「あ…あの、皆さん一人ずつ執事が付いておりますので…」
あたしの様子を窺うようにして啓人が言った。
ああ。そういうことね。
優しさは嬉しいけれど、
執事達にも自分の時間を持ってほしい。
これが、あたしの一番の本音だった。
「ありがとう。気持ちは嬉しいわ。
でも、大丈夫よ。あたしには燐がいるものっ!」
そう言って、隣の燐を啓人に紹介した。
「あたしの一番の友達なの。燐って名前なのよ。可愛いでしょ」
「お美しいですっ。お名前も素敵で…」
「いえ、そんなことはっ…」
なんとなく、啓人の表情が和やかになった気がした。
「大丈夫だから。あなたは家に帰って良いよ」
「はい。では、お屋敷のように戻させて頂きます」
啓人は最後に、もう一度振り返って
学校から姿を消した。


