涙も一段落ついて、
公園のベンチに二人と一匹で腰かけた。
「そういや、その犬どうした?」
不思議そうな瞳でわんこを見つめる仁。
「捨て犬だったから、拾った」
「飼うのか?」
「そのつもり」
「ふ~ん」
暫くわんこを見つめると、
突然あたしの手からわんこを取り上げた。
そして、わんこを仁の隣にちょこんと座らせた。
「ちょっ、どうしたの?」
「コイツには、見せちゃいけねぇと思ってな」
「何……」
仁はあたしの後頭部を片手で持ち、
あたしに覆いかぶさるようにしてキスをした。
一瞬だったけど、スローに見えた。
仁の顔がスローで近づくけど、
キスはほんの一瞬だった。
仁の顔が遠くなっても、
いまだに言葉が出てこない。
まず、口が動かなかった。
突然すぎて、思考回路が止まってて。
でも、頬は自分でも分かるくらいに
赤く火照っていた。
あたしの真っ赤な頬に
仁は『可愛い』と言って、キスをした。


