でも、男の子の仁に体力で勝てるわけがなくて
すぐに捕まってしまった。
あたしの肩手をつかんだと同時に…
───ギューーーーッ
「じ、仁っ!?」
仁がこれでもかってくらいに
力強くあたしを抱きしめた。
仁の顔はあたしの肩にあったから
表情を見ることは出来なかった。
「じ…」
「ルア」
もう一度名前を呼ぼうとしたら、
突然耳元で囁いてきた。
ただそれだけのことなのに
どうしてこんなに心臓が脈立つんだろう。
あたしは黙って次の言葉を待った。
わんこは、どうにか顔を出して息をしていた。
「好きだ!」
仁が今何を言ったのか分からず
あたしはただ硬直してしまった。
言葉が何度もリピートされる。
リピートされるにつれて、
知らぬうちに涙が頬を伝っていた。