こんなに苦しいなんて思わなかった。


好きって気付いたのに。

気持ちを伝えないまま、終わっちゃったよ。


仁は、あたしのことを
ただの『お嬢様』としてしか
見てなかったんだ。

『一人の女の子』として
見てくれてなかったんだ…。



「…ありがとう。わんこ」


勝手に“わんこ”と名付け、
あたしは服で涙を拭った。


「遠いところに行こうか」

わんこはク~ン?と不思議そうな目をした。


「誰も居なくて、苦しい思いをしなくてすむ場所に」


わんこを抱えたまま、遊具を立ち
歩こうとした時だった。




「ルアッ!」


振り向くと、息を切らして、肩で呼吸をしている仁がいた。


仁の顔を見て、あたしはすぐに
わんこを連れて全力で走った。



「ちょ、待てよっ!!」


背中越しに仁の声が聞こえてきたけど
振り向きもしないで、がむしゃらに走った。